世の中のビジネスの潮流が様々な側面で変化していることは誰も疑うことはないでしょう。
それに伴い、そのビジネスを支えるマネジメントの仕組みを変化していきます。
その中でも注目しているのは、「事業経営がプロジェクト化」していることです。
「イノベーション」の必要性が叫ばれ、スピード感のある事業の舵取りが求められる中、企業体として成長・発展していくためには、この「事業をプロジェクトとして捉えてマネジメントしていくやり方」が重要なポイントとなってくるのではないでしょうか。
◆ 企業におけるプロジェクトとは
プロジェクトマネジメントの知識体系や方法論をまとめた文献などには、
「プロジェクトと定常業務の違いは?」という定義が書かれています。
日本で一番ポピュラーなPMBOK(Project Management Body of Knowledge)という
国際的に標準とされるプロジェクトの知識体系の中では、
プロジェクトの特徴は、「有期性」「独自性」・・
などと書かれています。
「独自の製品・サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」
つまり、明確な始まりと終わりがあるものがプロジェクトの特徴ということです。
その反対が「定常業務」であり、継続する業務で一般には既に決められている手続きに従って反復的なプロセスを行う業務を指します。
プロジェクトと定常業務を比較すると、当然プロジェクトの方が「不確実性」を伴い、より綿密な計画が必要とされます。
これまでの一般的な流れとしては、
・プロジェクトで新規事業を立ち上げ、それを定常業務化していく
・新しい仕組み(サービス、組織、ITシステムなど)を創造し、それを定常業務に引き渡していく
しかし、この流れも徐々に変わってきているのではないでしょうか。
◆ プロジェクトとして事業を成長・発展させる新たな流れ
私の知る限りでは、WEBサービス系の企業に限らず、特に米国などでその兆候が見受けられます。
その流れとしては、まず新規事業をプロジェクトとして立ち上げます。
コンセプト的な企画から始まり、F/S (フィージビリティースタディー)などの調査・検討、事業モデルの設計等を含めたビジネスプランが練られ、プロジェクトが始動します。プロジェクトプランニングが行われ、実行フェーズに進み、必要な人員、業務、ITシステムが準備・開発されて新規事業がリリースされます。
ここまでは一般的な流れですが、その後が違ってきます。
通常は、ここで定常業務への引き継がれて、日々のオペレーションとして事業が継続的に運営されます。
しかし、今後はそのプロジェクトで立ち上がった新規事業あるいは新サービスが、
「プロジェクト」のまま運営されていくケースが増えるのではないかと思います。
新規事業の立ち上げがフェーズ1とするなら、運営・改良がフェーズ2、そして常に有期的なフェーズを設け、それぞれのフェーズごとに次のフェーズのプラニング・判断を行う。
このプランニング・判断というのは、プロジェクトを継続する・終了するも含まれます。
つまり、「永続する」ことを前提とせず、場合によっては、そのプロジェクトをM&Aの対象として売却して終了することも議論されることになります。
先日お話をうかがった経営者の方が開口一番、
「正直、ビジョンとか考えてないです。目の前のことを回すので精一杯で・・」
口調と表情から、全く考えてないというのではなく、ただビジョンを自ら語ることに少し自信がないというか、何となく照れ臭ささを感じられているのではと受け止めました。
ただそうも言ってられません。組織として事業を行う限り、ビジョンを示すことは必須事項です。これこそが、トップである経営者が果たすべき最も重要な役割の1つです。
皆が同じ方角を向いて仕事をしている組織は勝ちます。
事業組織のすべての活動が、1つの方向性へと力が合わさっている状態。
この状態を導くためには、明確なビジョンを描き、それを組織全体に示すことが必要です。
そして、これこそ組織のトップたる経営者が持つ最重要「機能」の1つなのです。
では、ビジョンを示せばあとはうまく組織が動き出すかというと、もちろんそうではありません。どれだけ明確にビジョンあるいは戦略的方向性を打ち出したとしても、それがそれぞれの部門や課などの現場の活動レベルまで浸透して実行されていかなければ、組織全体の目標を達成することは出来ません。
今年も残りわずかとなりました。
当社は今日で仕事納めとなります。
今年を振り返ると、新しい試みをいくつかしました。
その1つが、「事業成長診断ツアー」です。
この試みの意図ですが、当社はお陰さまで創業9年目を迎え、振り返ると、1社1社のクライアント企業様と深くお付き合いをさせて頂きました。
その一方で、企業規模はさまざまですが、業種は大きく捉えると7〜8種に限定されつつあることに気づきました。
コンサルティングというビジネスだけを考えると、業界・業種が絞られていた方が、効率的というか楽です。 全く新しい業種・業界だと、毎回ゼロから勉強し理解することから始めないといけないからです。 ただ私の場合、それは全く苦にならないし、好奇心の方が勝り、また何と言っても、私自身がさまざまな業種・業界の具体的なビジネスを知ることが、提供できるコンサルティングサービスの付加価値を高めることになると信じているので、業界・業種を限定しないようにしています。
そういう意味では、あらゆる業種・業界のビジネスを知りたいという目標があり、その一貫として、今年の6月、7月と10月に「事象成長診断」というものを敢行しました。。
これは、これまで弊社のコンサルティング等を受けたことがない会社に訪問し、
経営者、幹部の方と約1時間お話をし、その会社の事業成長性、成長ポイントを診断して
簡易レポートを提供するというものです。
事業成長のさまざまなステージの企業がどんな課題を抱え、どんな試みをしているかを
調査する目的であったため、普段なかなかご縁のない業種の会社を選出してお話を聞く必要がありました。
そこで、これまで一度も行なったことがない取り組みをしました。
それは、DMを出すということです。
調査会社から、ある基準に満たす企業の情報を購入し、
今回の無料診断のご案内を郵送しました。
いきなり見ず知らずの会社から無料診断を受けませんかという手紙なので、
全く反応がないかもと思いましたが、結果2%程度の反応があり、
合計19社の経営者とお会いすることが出来ました。
これに加えて、弊社のコンサルティングを受けたことはないが、
知人から紹介してもらった6社にも無料診断を実施したため、
合計25社の会社の経営者・幹部の方のお話を聞くことが出来ました。
【対象企業の条件】
・年商:5億円〜200億円
・従業員数:20名〜500名
・設立年数:5年〜30年
・業績:過去3年黒字決算
この条件の当てはまる25社から事業成長の関する課題をヒヤリングしました。
その結果として、以下のようなランキングに事業成長に対して現在抱える障壁・課題を分類しました。
最近「ビジネスモデル」という言葉が流行っていて、
このキーワードでさまざまな書籍などが出版されています。
ただ、そのビジネスモデルの議論の中で、
事業の仕組みを考える上でとても重要な観点が、
あまり強調されていないという印象があります。
その観点とは、自分の事業が、「企画・見込型」あるいは「受注・請負型」なのかという区分です。
経営者は、この2つをしっかりと意識して区別しておかないといけません。
「企画・見込型」のビジネスというのは、売れるかどうか確証はないが、まず商品を企画し、作ったものを「売る」事業です。これは、商品の数量も価格も自社で決定できるので、うまくいくと大きく儲けが得られる。その一方、売れなければ在庫などで大損するリスクが高い。
「受注・請負型」のビジネスとは、既に売れることが確定しているものに対して、商品の生産・労務提供をする事業です。こちらは、数量も価格も得意先が決定をするため、独自技術などで強い差別化要素を持った交渉力のある会社でない限り、基本的には大きく儲けることができない事業タイプです。
両者の特徴をそれぞれ挙げると、
<企画・見込型>
<受注・請負型>
この2つのタイプによって、事業安定・成長への取るべき課題が異なります。
企画・見込型であれば、まず販路を散らすこと(1つの販売チャネルに依存しない)が重要課題の1つ。さらに、商品開発を進め、単一商品でなく、いかに商品の大きな柱を複数確立するかが事業の安定・成長への重要な課題。
受注・請負型では、製品や納期厳守などの「オペレーション品質の維持・向上」と業務の自動化・効率化による「単位あたりの利益向上」が課題。そして、安定性の確保のために、得意先を散らすことも重要な課題の1つです。
現在、自分の会社は、どちらのタイプのビジネスをしているのか、あるいはどちらに重心がかかった事業構造になっているのかをまず把握してください。その上で、事業の拡大可能性とそれに伴うリスクとのバランスを考え、両者の比率を調整していくことがとても大切になります。
たとえば、弊社のクライアントであるシステム開発関連の会社は、創業以来、「受注・請負型」のビジネスをしていました。得意先の1社が売上げの70%以上を占めているという状態でした。そこで、まず少しづつ得意先を増やし、1社にのみ依存しない得意先比率を図ると共に、自社企画の商品を開発し、より利益率の高いビジネスも画策し、会社全体としての成長を図り、成功しています。つまり、「受注・請負型」のビジネスで安定化を図ると同時に、「企画・見込型」のビジネスを仕掛け、事業成長を図ったということです。
その逆で、同じようにあるWeb系のシステム関連の会社では、自社企画のサービスを展開しながらも、そのサービスの開発・運営で培った技術を基に、システム開発の「受注・請負」のビジネスも行ない、全体としての収益の安定化を図っています。
このように、「企画・見込型」と「受注・請負型」の2つの事業タイプのバランスを取るというのがまず1つあります。 さらに、双方の長所・短所を融合させる新たな事業モデルを検討することも可能です。
普段の仕事上の会話で「システム」という言葉を使ったとき、大抵は、日常業務で使っている情報システム(ITシステム)のことを指すことが多いでしょう。
社内で「システム」と言えば、会計システム、受発注システム、顧客管理システムなど
その会社で使っている具体的なITツールのことを言ってると暗黙の了解があります。
しかし、本来「システム」という言葉がもっと広い意味を持ち、
情報(IT)システムだけを指す訳ではありません。
堅い表現をしてしまうと、システムとは、
「何かの目的を達成するように、一貫性を持って組織され、相互に繋がり影響し合う一連の構成要素のまとまり」といった感じになります。
もう少しシンプルに「全体としてある目的を達成しようと組織化されたまとまり」と言い換えてみると、事業組織とは、まさにこの「システム」の一種であることが分かります。
事業組織には全体としての目的があり、その目的達成のために組織化された
製造、販売・マーケティング、財務、人事、情報システムなどの機能を内包しています。
そして、これらの機能も、それぞれ目的を持ったシステムです。
このように、事業組織という大きなシステムの中に、さらに機能別組織としてのシステムが入れ子状に入っていて、目的の中に目的があるという構造です。
ここで、厄介なことは、下位の構成要素(各機能)の目的は、全体の目的と不整合を起こすことがあるということです。そして、実際のシステム全体の目的を意図した活動が、下位の構成単位の目的が合わせることで、必ずしも意図したものでなく、全体として誰も望んでいない方向に進んでいるということが起こります。
たとえば、大学という1つのシステムを考えると、大学というシステム全体の目的は、知識を発見・維持し次の世代へと伝えていくこと。
その構成要素である、ある学生の目的はよい成績を取る事かもしれないし、ある教授の目的は定年まで勤められる終身地位の権利を得ることかもしれない。管理者の目的は、予算の収支を合わせることかもしれません。
こういった下位の目的すべてが、全体の目的と衝突する可能性がある。たとえば、学生は自分の目的を達成するためにカンニングをし、教授は論文発表の為に学生を無視して研究に没頭し、管理者は教授をクビにすることで予算を収支を合わせるかもしれない。(著書「世界はシステムで動く」参照)
このように、大きなシステム全体の中の各構成要素が、それぞれの視点で、それぞれの目的(役割・機能)を果たそうとするとき、全体の目的との不整合が起こり得ます。
このことは、経営者として、事業組織をどのように設計し、どう運営していくすべきかに対して重要な示唆を与えれくれます。
システムの最上位の目的と下位の目的との調和を維持することが、うまくいくシステムには不可欠であり、事業経営とは、事業組織(システム)全体の整合性を合わせた設計と一貫性を保つための調整だと言えます。
その会社が事業経営のグリップをしっかり握っているかどうかは、
数値で事業活動の状況を語っているかで分かります。
「○○に問題が発生しています」 ← どのくらい問題なのか?
「○○は順調です」 ← どのように順調なのか?
「○○が改善しています」 ← どれだけ改善したのか?
これらの報告・議論を数字なしで行っている会社は、いづれ事業経営が立ち行かなくなるでしょう。
ところが、私の知る会社の中にも、年次決算時以外は、会社全体の売上高と経費しか数値管理していないという会社がありました。
一人でやっている会社ではなく、20名ほどの従業員がいる会社です。
その話を聞いて、思わず
「それざっくりし過ぎでしょう。。それでよくこれまで舵取りできましたね〜。」
と突っ込みを入れたら、その経営者は苦笑していました。
数値管理する対象は、売上、費用、営業利益といった財務指標だけでなく、
オペレーションがしっかり回っているかも数値で捉える必要があります。
そして、経営チームの各メンバーが、担当している業務に関連するオペレーション指標の
オーナーシップを持つことが重要です。
営業担当が売上という数値にコミットするように、生産、購買、経理、在庫などの業務責任者にも、関連するオペレーション指標に対するオーナーシップを持たせます。
(各指標には、必ず1名がオーナーとなるようにします。複数の業務に関連するから、数名が1つの指標のオーナーになるのは駄目です)
「現状の延長で考えると、縮小均衡が働く」
ある経営者と話をしたとき、正直言って、
この人は、社長なのか社員なのか分からないと思いました。
経営幹部も含めて、社員というのは、担当する部門・業務で、
問題が起こらないような道を選択するの常です。
できるか分からない仕事を作って苦労し失敗するリスクを冒すより、
できそうな仕事に限定して、着実な成果を挙げようというのは、
自然な考えでしょう。
スケジューリングをバケツに石を入れる例えを使って説明します。1週間の時間をバケツに、出来事や行動、予定を石に例え、その石の大きさはその予定の重要度を表します。
さて、あなたは様々な石をどのようにバケツに入れますか?
手元にバケツがあると想定しましょう。1週間という期間の中に、あなたには実に様々なこまかい予定や出来事があります。バケツの中に、そうしたこまかな予定、つまり小さな石か砂を先に入れてしまうと、すぐに半分ぐらい埋まってしまいます。
そうすると、あなたにとっての重要で大切なこと、「人間関係作り」「自己啓発」「健康な身体作り」「子どもとの時間」「将来の計画」といったようなこと、つまり大きな石が入るスペースがなくなってしまいます。
そして、あなたにとって重要なことが、また先送りされてしまうということになってしまいます。
ではどのようにしたら、たくさんの大きな石を入れることが出来るでしょうか? 大きな石を先にバケツに入れ、小さな石や砂を後から入れればいいのです。
〜引用ここまで〜
よく事業経営は航海に喩えられ、
事業モデル(ビジネスモデル)は、「船の設計図」だといわれます。
事業経営においては、
まず事業の目的(ミッション)があり、
その目的の方向へ進む過程のある時点において、達成したい状態(ビジョン)を定めます。
その状態に行き着くための道筋・順序(戦略)を取捨選択し、
その道筋・順序に対して、最適な事業全体の構造・仕組み(事業モデル)を作ります。
これを航海で喩えるならば・・
ミッションが「どこの海を・どの方角へ」航海する旅に出るかであり、
ビジョンは、その旅の次の「到着港」を示します。
戦略は、次の到着地点までの「航路」であり、
事業モデルは、その航路を「どんな船」(=船の設計図)で臨むのかを表します。
このように考えてみると、重要なことは、船の設計図(事業モデル)は、
それ単体でいくら考えても、何をどう設計していいか分からないということです。
つまり、どの領域をどこまで、どんな航路で進むかが分かって、
はじめてそれに最適な船の設計を考えることが可能になるということです。