「現状の延長で考えると、縮小均衡が働く」
ある経営者と話をしたとき、正直言って、
この人は、社長なのか社員なのか分からないと思いました。
経営幹部も含めて、社員というのは、担当する部門・業務で、
問題が起こらないような道を選択するの常です。
できるか分からない仕事を作って苦労し失敗するリスクを冒すより、
できそうな仕事に限定して、着実な成果を挙げようというのは、
自然な考えでしょう。
こうして、無難な仕事で安全に小さくまとまろうという縮小均衡力が働きます。
この縮小均衡に対して、バランスを崩し、さらなる事業成長への突破口をつくるのは、
経営者以外に誰ができるでしょうか。
経営者が、社員と一緒になって、現状の延長戦上で同じ視点から思考しては、
事業の成長はそこまでです。
経営者が、「これを絶対にやる!」とまず決めないと、
縮小均衡を崩すことなどできません。
できるかどうか分からない段階でも、「まず決めること」
そうでなければ、誰も動きません。
司馬遼太郎の書「坂の上の雲」において、
* 乃木軍官僚は、大戦略という高次元から、陸軍海軍という低次元へと問題を引き下げてしか考えれなかった
* 技術屋は、その分野の専門知識・経験はあるけれど、それは狭視的な見解であることが多い。しかし、乃木大将は、砲技術の専門家たちの意見を聞き過ぎて、なんの行動も出来なかった。
* かの悪名高い旅順の二〇三高地攻略では、乃木大将の無能な戦略策定力と官僚主義的な考え方により、ものすごい多くの日本軍人が、
あたかもロシア軍の射撃練習の的のようにされ、無念にも命を落とした
という記述があります。
企業においても、たとえば ITシステムなど現場の専門家に「それは無理です」などと言われ、それをまともに受けて行動できないリーダーが少なくない。 現場の専門家は嘘をついている訳でないにしても、戦略的な行動を決める際は、技術的にどうこうは後で考えるとし、大局を見据えた方向性を示して、「これは絶対にやる」と決め、トップダウンにて組織を動かしていく力量が必要となります。
「決める」は、経営者しかできない専権事項です。
現状の延長から組み上げるのではなく、結論からひとまず先に作ってしまう。
事業成長は、この経営者が「決める」ことから始まるのです。