普段の仕事上の会話で「システム」という言葉を使ったとき、大抵は、日常業務で使っている情報システム(ITシステム)のことを指すことが多いでしょう。
社内で「システム」と言えば、会計システム、受発注システム、顧客管理システムなど
その会社で使っている具体的なITツールのことを言ってると暗黙の了解があります。
しかし、本来「システム」という言葉がもっと広い意味を持ち、
情報(IT)システムだけを指す訳ではありません。
堅い表現をしてしまうと、システムとは、
「何かの目的を達成するように、一貫性を持って組織され、相互に繋がり影響し合う一連の構成要素のまとまり」といった感じになります。
もう少しシンプルに「全体としてある目的を達成しようと組織化されたまとまり」と言い換えてみると、事業組織とは、まさにこの「システム」の一種であることが分かります。
事業組織には全体としての目的があり、その目的達成のために組織化された
製造、販売・マーケティング、財務、人事、情報システムなどの機能を内包しています。
そして、これらの機能も、それぞれ目的を持ったシステムです。
このように、事業組織という大きなシステムの中に、さらに機能別組織としてのシステムが入れ子状に入っていて、目的の中に目的があるという構造です。
ここで、厄介なことは、下位の構成要素(各機能)の目的は、全体の目的と不整合を起こすことがあるということです。そして、実際のシステム全体の目的を意図した活動が、下位の構成単位の目的が合わせることで、必ずしも意図したものでなく、全体として誰も望んでいない方向に進んでいるということが起こります。
たとえば、大学という1つのシステムを考えると、大学というシステム全体の目的は、知識を発見・維持し次の世代へと伝えていくこと。
その構成要素である、ある学生の目的はよい成績を取る事かもしれないし、ある教授の目的は定年まで勤められる終身地位の権利を得ることかもしれない。管理者の目的は、予算の収支を合わせることかもしれません。
こういった下位の目的すべてが、全体の目的と衝突する可能性がある。たとえば、学生は自分の目的を達成するためにカンニングをし、教授は論文発表の為に学生を無視して研究に没頭し、管理者は教授をクビにすることで予算を収支を合わせるかもしれない。(著書「世界はシステムで動く」参照)
このように、大きなシステム全体の中の各構成要素が、それぞれの視点で、それぞれの目的(役割・機能)を果たそうとするとき、全体の目的との不整合が起こり得ます。
このことは、経営者として、事業組織をどのように設計し、どう運営していくすべきかに対して重要な示唆を与えれくれます。
システムの最上位の目的と下位の目的との調和を維持することが、うまくいくシステムには不可欠であり、事業経営とは、事業組織(システム)全体の整合性を合わせた設計と一貫性を保つための調整だと言えます。
このような考えから、弊社ではクライアント企業の事業目的である「ミッション」を最上位として、順に「ビジョン」⇒「戦略・事業モデル」⇒「全体のマネジメント」⇒「各機能のプロセス・オペレーション」の一貫性をまずチェックします。そして事業組織が、全体として最適な姿・動きをしているか確認しながら、必要な部分の再設計と仕組みのインストールを支援をしていきます。
「ビジョン」〜「オペレーション」の階層構造から成る事業組織に、事業目的と顧客価値という軸を縦に一本引き、事業全体として一貫性のある設計を行ないます。そして全体として矛盾なく最適化された姿に事業組織を整えていきます。こうすることで、背筋がピンと伸びた、一本線の通った成長しやすい組織ができます。 この考え方を比喩して、あるクライアントさんから、当社のことを「事業組織の接骨院」と冗談まじりに呼ばれたことがあり、なかなか的を得ていると思ったりています。
このような組織全体の目的と各部門・事業部の挙動がズレてくるという話は、大企業だけのことだろうと思うかもしれません。しかし、実際は、従業員数でいれば、だいたい30名を超えれば、放っておくと全体と部分のズレが生じ始めます。これは事業が急成長すればするほど、顕著に必然的に起こるものです。だからこそ、当然起きるものと捉え、そのズレがひどくなり事業成長にブレーーキをかける前に、事業組織の一貫性を一度チェックし、必要な調整を試みることが大切になります。